自動車運転死傷行為処罰法

標記法律が成立した(正式名称を「自動車の運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律」というらしい)。

とりあえず新聞報道によると、今まで刑法典にあった自動車運転関連の罪(自動車運転過失致死傷罪、危険運転致死傷罪)が新法に移動し、内容としては、①危険運転致死傷罪の処罰範囲が拡大され(こちらについてはまた今度)、②飲酒(服薬)の影響で交通事故を起こし、発覚をおそれて逃走する行為を犯罪化したという(「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」だそうである。過失運転致死傷罪の加重類型ということなのだろうか)。

①については内容を把握してからコメントしたいが、②については、ぱっと見た段階で反対である。こういうのは正しい罰則の使い方ではないと思う。

想像してもらいたい。飲酒運転をして事故を起こし、動揺して逃げてしまう人間はどういう人間だろうか。これはかなりはっきりしていると思う。バカ(それほど悪い意味ではない)な人間か、弱い人間である。バカな人間、弱い人間を処罰して何かいいことがあるだろうか。刑務所に入れたらバカでなくなり、弱くなくなるだろうか。私はそうは思わない。飲酒運転はよくない(だから飲酒運転に罰則があるのは結構なことである)。しかし、事故は過失によるものなのである。突然自分が人を死傷させてしまったときに、強く正しく美しく行動しなければ処罰される、というのはいかがなものだろうか。

20歳そこそこの学生が、軽い気持ちで飲酒運転をし、うっかり事故を起こして、さらにうっかり逃走してしまう姿を、私は容易に想像できる。未成熟(年齢だけの問題ではない)から来る問題行動に対して、社会から理解と愛情に欠けた仕打ちを受けた者が、その後よりよい人間に育っていくことは、絶対にないとは言わないが例外的であろう(なぜか手元にないが、岡本茂樹『反省させると犯罪者になります』(新潮新書、2013年)は大変勉強になった)。

自動車運転関連の条文が刑法からごっそり抜けたことは、司法試験受験生にとっては朗報かもしれません。

Pocket